Process Mining

プロセスマイニング 導入ガイド

プロセスマイニングプロジェクトの進め方

プロジェクトマイニングの導入に当たっては、まずプロセスマイニングの有用性を検証するために、「PoC(Proof of Concept)」を行うことがあります。

本稿では、PoCのプロセスマイニングプロジェクトを実行するための標準的な手順をご説明します。なお、今回ご紹介する手順は、プロセスマイニング採用決定後の「本格導入フェーズ」にも適用可能なものです。

さて、プロセスマイニングプロジェクトは、端的には「データ分析プロジェクト」だと言えます。したがって、従来のマーケティングリサーチやデータマイニングの枠組みで実行されるプロジェクトと大きな手順は変わりません。

流れを簡単に挙げると

  1. (1)データ分析計画を立てる
  2. (2)必要なデータを集める
  3. (3)データを分析する
  4. (4)分析結果を評価し、対応策を立てる
  5. (5)対応策を実行する
  6. (6)対応策の進捗状況をモニタリングする

となります。

ただし、上記の進め方について、1点注意していただきたいことがあります。

プロセスマイニングは分析して終わりではなく、プロセス改善を行い、収益向上、コスト削減、残業時間削減といった具体的な成果に結びつけるまで確実にフォローすることが重要です。このため、(5)対応策を実行する、(6)対応策の進捗状況をモニタリングする、という「運用フェーズ」が明確に組み込まれています。

それでは、上記の流れに沿った形でのプロセスマイニングプロジェクトの具体的な実行手順をご説明します。(下表参照

1.スコーピング

スコーピングでは大きくは以下の4つの業務が含まれます。

  • 対象とするプロセスを特定し、当該プロセスについての基本的な概要を収集・整理する
  • プロセスマイングプロジェクトの目的を決定する
  • プロジェクト遂行に必要なツールや分析手法を決定する
  • 期限や体制等も含む「プロジェクト計画」を作成する

業務プロセスには、製品受注プロセス、資材調達プロセス、人材採用プロセスなど様々な種類があります。大手企業の場合、それぞれのプロセスに係るイベントログデータは数百万〜数千万レコードになります。

最終的には、すべてのプロセスの改善を目指すとしても、期間が限られているPoCプロジェクトとしては、まずどのプロセスを対象とするか、実行範囲を設定する必要があります。

同時に、プロセスマイングを行なって何を得たいのか、目的や期待成果をプロジェクトメンバー、また、関係部署、経営陣等の承認を受けつつ明確化します。

また、対象プロセスや目的を踏まえて、利用するプロセスマイニングツール、適用する分析手法も併せて検討します。

そして、プロジェクトを実行する期限や体制を含む「プロジェクト計画」を策定し、メンバー、関係各位に周知します。

2.データ理解

データ理解には以下の3業務が含まれます。

  • イベントログから取得できる必要なデータ項目を特定する
  • システムに記録されているイベントログを確認する
  • システムに記録されているイベントログを検証する

スコーピングで作成したプロジェクト計画に基づき、まずイベントデータとしてどんな分析項目が必要となるかを検討します。プロセスマイニングで分析するために最低限必要な項目は「案件ID」、「イベント(活動)」、「時刻(タイムスタンプ)」ですが、部署や業務担当者別の分析を行いたい場合には、それぞれのイベントに紐づく「部署名」、「担当者」等の項目も必要となります。

次に、情報システム部門の支援も受けながら、自社システム、アプリケーションからどんなイベントログが取得できるかを確認します。

3.イベントログデータ作成

  • 目的に照らして必要なイベントログのデータセット(一揃い)を選定する
  • イベントログのデータセット作成に必要なデータを抽出する
  • 抽出したデータのクリーニング(マージ&パージ、データ統合、表記統一等)を行い、プロセスマイニングに投入可能なデータセットを作成する

いよいよ、プロセスマイニングに投入するイベントログの一揃い=データセットを作成する段階です。まずは、必要なイベントログを選定した上で、それぞれ異なるシステムやアプリケーションの所定のエリアから抽出します。

そして、各種データの案件IDベースでの統合や、空白セル、異常値の処理、明らかな例外プロセスの排除などの作業を行います。プロセスマイニングを確実に行うためには、投入するイベントログデータは、ノイズのない、構造化された「クリーンデータ」である必要があります。すなわち、データ分析においては、こうした「データクリーニング」と呼ばれる工程が、複雑で膨大なビッグデータであるイベントログデータにおいても不可欠です。

4.プロセスマイニング実行

プロセスマイニング実行には3つの業務を行います。

  • プロセスマイニングツールに投入したイベントログデータの概要を把握するため、基本的な統計数値を確認する
  • イベントログデータが、事前に予定したプロセスマイニング手法を適用することで、期待する分析結果が得られそうかを検証する
  • 目的達成に必要な各種プロセスマイニング手法を実行する

前工程で、プロセスマイニングツールに投入できるきれいなイベントログのデータセットを作成できました。プロセスマイニングでこのデータセットのファイルを開けば、瞬時に業務プロセスの流れを示す「フロー図」が作成されます。データディスカバリーの機能です。後は、様々な分析視点でツールを操作し、イベントログ分析を進めて行きます。

5.評価と対応策立案

評価と対応策立案では以下の3つの業務を遂行します。

  • プロセスマイニングで得られた各種結果から、問題・課題を抽出する
  • 抽出された問題・課題の解決のための対応策を検討する
  • 対応策を実行可能性や緊急性などの視点で検討し、対応策の実行計画立案する

プロセスマイニングツールによるイベントログ分析結果から、業務プロセスに関わる様々な問題が発見できます。もはややる価値がないと考えられる「ムダなプロセス」、リードタイムが長くなる原因となっているボトルネック、マニュアルなどに明示された標準プロセスとは異なる「逸脱プロセス」などです。

こうした問題について、根本原因は何か、また改善することによってどんな成果が期待できるか、分析結果を深堀し評価するとともに、具体的な対応策を検討します。

こうして、業務プロセス上の問題解決のための対応策は、それぞれの実行可能性や期待成果などの軸で優先順位をつけ、対応策の実行計画を立てます。

対応策の中には、BPM(Business Process Management)に組み込んでいるワークフロー設定の変更や、プログラムの修正が必要になるケースがあります。

6.展開

展開は、文字通り対応策を実行する業務です。

対応策を現場に展開することは、具体的には上述したBMPのワークフローの再設定、プログラムの修正といった情報システムへの手当てに加えて、ムダな業務の廃止、ボトルネックの解消策、プロセスの組み直し、マニュアルの改訂、担当者へのトレーニング、コンプライアンス研修など、様々な施策を行うことです。

7.モニタリング

モニタリングは、実行策の進捗を確認する業務です。

現場に展開された各種対応策が、確実に定着しているか、期待通りの成果をあげているかなどを定期的にチェックし、必要な追加施策を立案・実行します。

業務プロセス改善は1回やったら終わりではなく、企業の外部環境や組織の体制変更などに対応するため、「継続的なプロセス改善」に取り組まなければなりません。

したがって、プロセスマイニングの導入フェーズに続く運用フェーズでは、プロセスマイニングツールを活用しながらPDCAを回すことが極めて重要です。

<プロセスマイニング プロジェクト実行手順>
スコーピング
(実行範囲設定)
対象とするプロセスを特定し、当該プロセスについての基本的な情報を収集、整理する
プロセスマイニングプロジェクトの目的を決定する
プロジェクト遂行に必要なツールや分析手法を決定する
期限、体制等も含むプロジェクト計画を作成する
データ理解 イベントログから取得できる必要なデータ項目を特定する
システムに記録されているイベントログを確認する
システムに記録されているイベントログを検証する
イベントログデータ作成 目的に照らして必要なイベントログのデータセット(一揃い)を選定する
イベントログのデータセット作成に必要なデータを抽出する
抽出したデータのクリーニング(マージ&パージ、データ統合、表記統一等)を行い、プロセスマイニングに投入可能なデータセットを作成する
プロセスマイニング実行 プロセスマイニングツールに投入したイベントログデータの概要を把握するため、基本的な統計数値を確認する
イベントログデータが、事前に予定したプロセスマイニング手法を適用することで、期待する、分析結果が得られそうかを確認する
目的達成に必要な各種プロセスマイニング手法を実行する
評価と対応策立案 プロセスマイニングで得られた各種結果から、問題・課題を抽出する
抽出された問題・課題の解決のための対応策を検討する
対応策を実行可能性や緊急性などの視点で検討し、対応策の実行計画を立案する
展 開 対応策を実行する
モニタリング 対応策実行後の進捗を監視し、必要な追加施策を立案・実行する
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