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プロセスマイニング
2019.12.04

働き方改革支援としてのプロセスマイニングツールの海外動向と国内の状況<前編> - 情報通信総合研究所 上席主任研究員 手嶋 彩子氏-

日本企業の働き方改革の動向

「働き方改革関連法」施行(2019年4月)など現在、法整備も進展しており、「働き方改革」を官民が一体となって取り組んでいる。

全国労働組合総連合がOECD(経済協力開発機構)のデータを基に作成し、公表した「実質賃金指数の推移の国際比較」では、1997年の実質賃金指数を100とし、2016年と比較した場合、日本は89.7と低下しており、先進国の中でのマイナス成長は珍しい(図1)。実質賃金の低下は労働生産性の低さが原因の一つである。

【図1】実質賃金指数の推移の国際比較(1997年=100)(出典:全国労働組合総連合(2019年5月23日1))
【図1】実質賃金指数の推移の国際比較(1997年=100)(出典:「全国労働組合総連合」(2019年5月23日)

NTTデータ経営研究所とNTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションの「NTTコム リサーチ」登録モニターを対象にした「働き方に関する調査」(2019年5月に実施、有効回答数1,110人。2015年から毎年実施)によると、働き方改革に取り組む企業は、昨年度比で10ポイント以上増加し、全体の49.3%となった。従業員100人未満の規模の企業では、昨年度と比べて12.8ポイント増加し、30%の企業が働き方改革に取り組んでいる。働き方改革に取り組んでいる企業の従業員は、2018年度の調査結果と比較し、「休暇のとりやすさ」や「プライベートとの両立の容易さ」、「セクハラやパワハラ等の減少」をプラスの変化として挙げる割合が増加している一方、「労働時間の減少」をはじめとして、多くの項目でプラスの変化として挙げる割合が減少している。特に、「生産性向上」をプラスの変化として挙げる割合は、昨年度18.5%に対して11%と7.5ポイント減少している(図2)。

【図2】働き方改革に取り組んでいる企業のプラスの変化(N=547)(出典:NTTデータ経営研究所「働き方改革2019」(2019年7月5日2))
【図2】働き方改革に取り組んでいる企業のプラスの変化(N=547)(出典:NTTデータ経営研究所「働き方改革2019」(2019年7月5日2)

現在の「働き方改革」は、取り組んでいる企業は増加しているものの、その効果として「生産性向上」を評価する人は多くはない。業務のやり方の変革を伴わない「働き方改革」は生産性向上につながらず、従業員の残業時間の削減など、給与の低下をもたらすのみとなってしまい、従業員の「働くこと」に対する満足度向上にはつながらない。本稿ではこれらの課題を解決する有力な手段の一つとなる、プロセスマイニングツールについて紹介するとともに、大手プロセスマイニングベンダーへ行ったインタビューを掲載し、国内への導入における今後の課題について検討する。

プロセスマイニングツール

「プロセスマイニング」への注目度が高まっている。「プロセスマイニング」とは、「業務プロセスの処理パターンをイベントログデータの蓄積により可視化し、改善ポイントを具体的に特定することで業務効率化を支援する手法」である。

プロセスマイニングは業務プロセスの可視化を行うが、これは業務改善におけるPDCAサイクルの「CHECK」に相当する。業務プロセス可視化の手法としてこれまで採られてきた担当者へのヒアリングは、労力、時間が多大にかかることや、ヒアリング対象者の業務理解度やリスク感度によりばらつきがあることが課題となっている。これに対し、プロセスマイニングツールは、正確かつ客観的に、迅速に業務を見直すことができる。

【図3】PDCAサイクルにおけるプロセスマイニングの領域
【図3】PDCAサイクルにおけるプロセスマイニングの領域

図3のとおり、PDCAサイクルの「CHECK」でプロセス可視化を行うことで、プロセスの改善(「ACTION」)につなげることができる。可視化の手段として、具体的には、RPAツールの導入等を行う。

欧州プロセスマイニングベンダーによる日本国内事業の展開

欧州プロセスマイニングベンダーによる日本国内における事業が活発化している(表1)。プロセスマイニングツールの大手グローバルシェア1位の独Celonis社(ミュンヘンで2011年設立)は、日本法人を2019年10月に設立し、その活動を本格化させている。同社の2018年度のグローバル売上高は1億ドル以上である。Uber社、BMW社など700社を超えるユーザーを持ち、特に業務変革において大きな障害となりやすい部門やシステムの分断を乗り越えられることが評価されている。

【表1】プロセスマイニングサービス事業者の国内市場への主な参入動向(出典:各種公表情報より、筆者作成)
【表1】プロセスマイニングサービス事業者の国内市場への主な参入動向
(出典:株式会社情報通信総合研究所 InfoCom T&S World Trend Report2019年12月号(通巻368号)

Celonis社はグローバル市場では直販による拡販を推進しているが、日本市場ではパートナーによる販売を行う。同社はSAPジャパンや、三菱総合研究所、アビームコンサルティングなどの大手コンサル企業計10社とパートナーシップを結んでいる。中でも注目はSAPジャパンとの取り組みで、同社はSAPのERP製品にCelonis社のツールをあらかじめ組み込んだパッケージを提供していく方針だ。

RPA大手の米UiPath社はCelonis社と2017年12月に提携し、顧客開拓や、ツール同士の連携等の協業を開始した(ただし、2019年10月15日に、オランダ発のプロセスマイニングツール、Process Goldの買収を発表しており、Celonis社との提携関係には変化が生じると思われる)。通信事業者ではKDDIがCelonis社製品を自社導入し、業務改善を進めている。

グローバルシェア2位のイタリアのCognitive Technology社は、プロセスマイニングソリューション「myInvenio」の日本における3年間の独占販売代理店契約を2019年1月にハートコア社と締結し、日本での事業展開を開始した。「myInvenio」は、業務プロセスを自動的に可視化し、無駄な業務やボトルネック、RPAに適したプロセスを発見、プロセス改善につなげることで、収益向上、業務コスト削減を可能にする。ユーザー企業はイタリアの大手銀行、大手自動車メーカー等、世界で600社を超える。ハートコア社は、「myInvenio」と、PC操作ログを収集するツール「CICERO」、RPAソリューション「HeartCore Robo」も併せて提案し、働き方改革のさらなる推進の支援に取り組んでいる。

NTTグループでも事業に乗り出している。NTTデータイントラマートは、ドイツのプロセスマイニングサービス事業者Signavio社とパートナー契約を結んだ。注力分野のBPMソリューションの一環として同社サービスを提供し、従来の製品ラインアップを補完する。NTTデータイントラマートはSignavio社と共同でマーケティングを行い、今後3年間で20件のBPMプロジェクト受注を目指している。

この他、日本のRegrit Partners(コンサルティング会社)が、独Lana Labs社の「LANA Process Mining」を活用したオペレーションアセスメントサービスを提供していることを2019年2月に発表している。

後編は...

後編は、プロセスマイニングソリューション「myInvenio」のCognitive Technology社CEO Massimiliano Delsante氏とハートコア社代表取締役社長/CEO神野純孝氏へのインタビューをお送りします。

てしま・あやこ
手嶋 彩子(てしま・あやこ)

2004年より(株)情報通信総合研究所にて、ICT経済の動向分析、国内の通信サービス市場やICT利活用産業の動向に関する調査研究を行っている。経営学(修士)。

出典((株)情報通信総合研究所「InfoCom T&S World Trend Report」12月号より)

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